クルード・ディ・マーレ(Crudo di Mare)

切った魚に、塩とオリーブオイル。

それだけで成立する料理がある。
それが、南イタリアのクルード・ディ・マーレ(Crudo di Mare)だ。

火は使わない。
ソースも作らない。
飾りもほとんどない。

あるのは、
素材の純度と、オイルの質だけ。

クルードとは何か

イタリア語で「crudo」は、
「生」、「Mare」は「海」を意味する。

南イタリア、特にプーリア州など
海に近い地域では、新鮮な魚介を
そのまま塩とオリーブオイルで味わう文化が根づいている。

寿司のような技法も、
カルパッチョのような装飾もない。

ただ、
海から上がった魚に、畑のオイルをかける。

それは、
土地と海の距離が近い場所でしか生まれない料理だ。

カルパッチョとの違い

日本では「カルパッチョ」と混同されがちだが、
両者は似て非なるもの。

カルパッチョは、
薄く切った魚や肉にソースをかける料理。

クルードは、
魚そのものを味わうための最小構成

レモンは必須ではない。
ハーブも主役ではない。

主役は、
魚とオリーブオイル。

余計なものを削ぎ落とすことで、
逆に、オイルの輪郭がくっきりと現れる。

なぜオリーブオイルなのか

魚に油をかける。

一見すると不思議だが、
ここに地中海の感覚がある。

オリーブオイルは、

  • 魚の甘みを広げ

  • 塩味を柔らかく包み

  • 口当たりをなめらかにする

それはソースではない。
媒介(ばいかい)だ。

海の塩気と、
大地の果実をつなぐ存在。

クルード・ディ・マーレは、
オリーブオイルの役割を最も純粋に示す料理でもある。

海と畑の距離

南イタリアでは、
海とオリーブ畑が同じ風景の中にある。

朝、港に魚が並び、
昼には搾りたてのオイルがある。

クルード・ディ・マーレは、
その距離の近さから生まれた。

保存や加工のためではない。
新鮮さを祝うための食べ方だ。

日本で考えるクルード・ディ・マーレ

瀬戸内海を望むオリーブ園

日本には、寿司に刺身という生魚を食べる文化がある。

だからこそ、
クルード・ディ・マーレはとても自然に受け入れられる。

けれど決定的に違うのは、
油の存在

醤油ではなく、
わさびでもなく、
オリーブオイル。
酢飯の代わりにパン。

この置き換えだけで、
景色が変わる。

 

瀬戸内海に坂出のオリーブオイル。
海と畑の関係は、瀬戸内にも存在している。

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