ピンツィモニオ(Pinzimonio)

イタリアの家庭で、食卓の片隅にそっと置かれる小さな器。
中には、オリーブオイルと塩、胡椒だけ。

そこに、生の野菜を浸して食べる。
それがピンツィモニオ(Pinzimonio)です。

調理らしい調理はありません。
火も使わず、味付けも最小限。
それでも、この料理はオリーブオイルの質を正直に映し出す

ピンツィモニオとは何か

ピンツィモニオは、主にトスカーナや中部イタリアで親しまれてきた、極めて素朴な食べ方。

  • 生野菜

  • 良質なオリーブオイル

  • 塩(+黒胡椒)

それだけ。

元々は

  • 農作業の合間

  • 食事の前の軽いつまみ

  • オリーブオイルの出来を確かめる方法

として食べられてきました。

フェットゥンタが「パンで味わう」なら、
ピンツィモニオは**「野菜で味わう」オリーブオイル**です。

フェットゥンタとの違い

同じトスカーナの食文化ですが、役割は少し違います。

フェットゥンタピンツィモニオ
パンが土台生野菜が主役
焼く・温かい生・冷たい
新油の祝祭感日常的・静かな味わい
香ばしさみずみずしさ

ピンツィモニオは、
オリーブオイルが野菜の水分と混ざり合った瞬間の変化を楽しむ料理。

オイル単体では感じなかった甘みや辛味が、
野菜を通すことで立ち上がってきます。

使われる野菜と、その意味

伝統的に使われるのは、どれも生で食べられる野菜

  • セロリ

  • にんじん

  • フェンネル

  • きゅうり

  • ラディッキオ

日本では

  • きゅうり

  • 大根

  • にんじん

  • セロリ

  • かぶ

で十分に再現できます。

重要なのは、
野菜の味が強すぎないこと

ピンツィモニオはサラダではありません。
主役はあくまで、オリーブオイルです。

オリーブオイルを“つける”という文化

ピンツィモニオの面白さは、
**オリーブオイルを「かける」のではなく、「つける」**こと。

小皿にオイルを注ぎ、塩をひとつまみ。
野菜を浸して口に運ぶと、

  • 最初にオイルの青い香り

  • 次に野菜の水分

  • 最後に喉に残る辛味

という順番で味が流れます。

これは、
混ざりきっていないオイルだからこそ味わえる体験

完成されたドレッシングでは得られない、
生のオリーブオイルの表情があります。

新油の季節とピンツィモニオ

ピンツィモニオは一年中食べられますが、
本当に価値を発揮するのは新油の季節

若くて、少し荒々しいオリーブオイル。
その強さを、野菜がやさしく受け止めてくれます。

「今日はパンより、野菜の気分だな」

そんな日には、
ピンツィモニオが選ばれる。

それは、オリーブオイルと日常が地続きである証拠です。

日本で楽しむピンツィモニオ

作り方は驚くほど簡単。

  1. 小皿にオリーブオイルを注ぐ

  2. 塩をひとつまみ(入れすぎない)

  3. 野菜を切るだけ

ポイントは

  • フレッシュなオイルを使うこと

  • 冷やしすぎないこと

オイルの香りが立たなければ、ピンツィモニオではありません。

ピンツィモニオは、静かな贅沢

派手さはありません。
写真映えもしにくいかもしれません。

でも、
オリーブオイルを信頼している人ほど、この食べ方に戻ってくる。

それがピンツィモニオ。

もし手元に、自信を持って勧められたオリーブオイルがあるなら。
ぜひ、野菜を切るだけの日を作ってみてください。

オイルの本音が、そこにあります。

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